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大阪高等裁判所 平成5年(行コ)69号 判決

大阪府東大阪市南四条町一三番七号

控訴人

村田雅治

右訴訟代理人弁護士

村松昭夫

杉本吉史

大阪府東大阪市永和二丁目三番八号

被控訴人

東大阪税務署長 長谷川宗平

右指定代理人

草野功一

山本聖峰

野村正明

坂田和規

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対し、昭和六二年三月五日付で昭和五八年分ないし昭和六〇年分の所得税についてした各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

3  控訴費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二事案の概要

事案の概要は、当審における控訴人の主張を次のとおり付加するほか、原判決事実及び理由第二事案の概要(原判決二頁末行から同四〇頁一行目まで)のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決六頁一行目の「別表二」の次に「の売上原価欄」を、同九頁一〇行目の「別表二」の次に「の特別経費欄」を、同一〇頁二行目の「別表二」の次に「の事業専従者控除額欄」を、同一九頁八行目と同二一頁二行目の各「甲二号証」の次にいずれも「の一ないし三九」を、同二一頁三行目の「請求書」の次に「、まとめて以下単に「甲二号証」ともいう。」を、同三一頁末行の「別表二」の次に「の売上金額欄」を、同三二頁二行目の「別表四」の次に「の売上金額欄」をそれぞれ加える。)。

(控訴人の主張)

1  売上金額が同程度の鉄工業者間では、半製品を材料にしている業者の売上原価率の方が、全くの素材を材料にしている業者のそれよりはるかに高いところ、控訴人はステンレス製の半製品を材料として鉄工業を営むものであるから、被控訴人は、控訴人の類似同業者を抽出する際、半製品を材料とするか否かを考慮すべきであったのに、これを考慮していない。したがって、右の点を考慮しないで抽出された同業者の平均売上原価率をもってされた控訴人の売上金額の推計には合理性がない。

2  控訴人の主要なステンレス製品の昭和五九年及び昭和六〇年における平均単価は約五三三円であるから、昭和五九年分の控訴人が田中工作所から購入した材料の個数から横山に販売した製品の個数を控除した一万一〇〇〇個が全て製品になって販売されたものと仮定すると、その金額は五八六万三〇〇〇円となる。これに甲二号証に記載された横山に対する昭和五九年分の売上と岡本製作所に対する同年分の売上の合計額二四三二万三二四九円を足すと三〇一八万六二四九円となる。これは、控訴人が田中工作所から購入した材料を不良品を出さずに全て製品にし、かつ、在庫を残さなかったと仮定したとしても、その昭和五九年分の売上は、被控訴人の推計した売上金額をはるかに下回る三〇一八万六二四九円にしかならないことを示すものであり(昭和六〇年分についても同様である。)、このことからしても、被控訴人のした推計に合理性がないことは明らかである。

第三証拠関係

証拠関係は、原審記録中の証書目録及び証人等目録並びに当審記録中の証人等目録各記載のとおりであるから、これを引用する。

第四判断

一  当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断するが、その理由は、次に付加、訂正するほか、原判決事実及び理由第三当裁判所の判断(原判決四〇頁三行目から同八六頁四行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決五一頁一〇行目から一一行目にかけての「大きく異なる」の次に「し、また、材料が半製品か全くの素材かによっても売上原価率が大きく異なる」を加える。

2  原判決五二頁七行目の「高くなると考えられる。)」の次に「し、また、材料が半製品か全くの素材かによっても売上原価率が異なってくると解される(一般論として、材料が半製品の仕事が多いと、売上原価率は高くなる。)」を加える。

3  原判決五三頁二行目の「材料持ちの割合」の次に「や材料が全て半製品であること」を加える。

4  原判決五六頁三行目の次に行を改めて、次のとおり加える。

「7 また、控訴人は、前記控訴人の主張2のとおり主張する。しかし、控訴人の主張する売上金額は、甲二号証の記載に基づくものであるところ、これが信用できないものであることは後記三1の記載のとおりである上、控訴人の主要なステンレス製品の昭和五九年及び昭和六〇年における平均単価が約五三三円であることは本件全証拠によってもこれを認めるに足りない。」

5  原判決五六頁四行目の「7」を「8」と改める。

6  原判決六六頁一一行目から末行にかけての「昭和六〇年九月」を「昭和六三年九月」と改め、同六七頁三行目から四行目にかけての「困難というべきであり、」の次に「また、当審におけるビデオテープの検証の結果によっても、控訴人の作業工程において、その主張に係るほどの大量の不良品が発生することを認めるに足りないので、」を加える。

二  よって、控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山本矩夫 裁判官 林泰民 裁判官 谷口幸博)

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